壺中之天(こちゅうのてん)

壺の中の世界、別天地
壺(つぼ)の中の世界。別天地。『漢書(かんじょ)』の方術(ほうじゅつ)伝
(術を使う人の伝記)に見える話。

漢代に費長房(ひちょうぼう)という男が、市(いち)の役人をしていた。
ある時、2階から見ていると、市場の薬売りの老人が店頭に壺を掛けていて、店じまい
するとピョンと壺の中へ飛び込んだ。市場で気がついた人は誰もいない。

費長房だけがこれを見、その老人に頼んで一緒に壺の中へ入ることができた。
入ってみると壺の中には立派な建物が並び、うまい酒やごちそうが満ちあふれている。
2人で飲んで帰った、と。

壺の中にユートピアがあったわけだ。話はこれだけで至って簡単だが、
こういう短い話にだんだん尾鰭(おひれ)がついて、唐代に流れ「伝奇(でんき)」となり、
小説の源になる。   (全国漢文教育学会長 石川忠久氏)

・・・・「壷中天」、「壷天」とも言うようです。件の話より「呑み屋」の屋号にも
よく使われているのを目にします。まさにピッタリのネーミングです。
「漢書」というとなんと1800年以上も昔の話、そんな昔から「壷の中に世界が広がっている」
と考えた人がいたと思うと楽しいですね。
「ボトルスコープ」も身近なボトルの中に世界を作ることで、
意外な所に広がる不思議空間をお楽しみ頂けたらと思います。