江戸 浅草田甫酉の町詣
今の浅草では信じられないような光景です.
窓からは田んぼとわらぶき屋根、遠くに富士が望めます.
ここは実は吉原の遊女の部屋、不夜城といわれた吉原も、
江戸幕府からは”悪所”とされ町はずれの田んぼの中に作られていたのです.
「酉の町詣」とは画面右奥の見えない部分にある大鳥神社の祭礼で旧暦11月に行われていました.
晩秋の枯れた風景に雁が飛ぶ淋しげな光景ですが、
猫の視線の先には豆粒のような参詣客が大勢描かれています.
「動と静」対比が面白い画題です.
遊女の部屋ということで、それにちなんだ小物が散りばめてあります.
左側にちらっと見えている巻物状のものは「オンコトガミ」といって
いまのティッシュペーパーみたいなものです.
その傍には「かんざし」よくみると飾りには”キノコ”がぶら下がっていたり.
白猫も遊女がよく猫を飼っていたこともありますが、
白猫で遊女そのものを暗示しているともいわれます.
広重の絵にはありませんが行燈を入れてあります.
当時の他の浮世絵にも遊女の部屋に行燈が描かれているからです.
竹筒の後ろから入った光でぼんやり灯るようになっています.
今では考えられないくらい薄暗い江戸の夜が感じられます.
上に跳ね上がる蔀戸になっています.
杉にも風格があります.
苔にも様々な色合いがあります.
本堂の往生極楽院(重要文化財)です.
寛和元年(985年)の建造と伝えられています.
ここは本堂の背面にあたり、中に金色の
阿弥陀如来が鎮座されています.
宸殿の虹の間、天井に向かって伸びる大胆な
襖絵は下村観山の筆によるものです.